私ではなく彼が - ロイ・ハッタスリー

2011/ 02/ 01
                 
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At Shaftesbury Avenue

いや、私がジャッキー(ジェイク)を選んだのではない。
ジャッキーが私を選んだのだ。それでよかったのである。
彼が私の前に姿を現してくれなかったら、
狼をならしてきた太古の先祖から引き継いだ
人生における友情の喜びというものを逃すところであった。
リードの一方に私、片端に犬。私は再び軽やかに散歩する日々を取り戻した。

バスターの代わりはいない。しかし彼が死んで2ヵ月後、後継者を探し始めた。
彼は(いつも彼なのだ)バスターの思い出に敬意を表する存在でなければならない。
そうは言いつつも、家で私を迎えてくれる他の犬のことを考えるのは
裏切りのようにも感じていた。

ある日、レスキューセンターで片目の犬ネルソンを見ていたとき、
おもちゃのコングが隣のケージから私の足元にころがってきた。
コングはゆがんだ梨のようなゴムの塊で、ぶつかるたびに予想のつかない方向へはねる。
その犬舎の住人ジャッキー、(私が探していた雑種ではなく、
イングリッシュブルテリアの純血種)をたいそう喜ばせていた。
私はコングをジャッキーに投げ返した。するとジャッキーはまた投げ返してくる。
まるでウインブルドンのテニス試合のようになった。

ジャッキーはクリスマスの前ダービーシャーのボルスオーバーの通りを
寂しそうにさまよい歩いていたところを保護された。人を必死に探していたという。
レスキュー・センターで独居ケージに入れられたジャッキーにとって
コングが唯一の友人であった。

私はジャッキーには別の友人が必要だと思い、それは私がなろうと思った。
一目ぼれではなかったが、私はジャッキーを家に連れて帰り、
私の中で愛情が育っていくのを待つことにした。

そして皮肉にも私とジャッキーの結びつきを深める
不幸な出来事が立て続けに二つ起こったのである。
ひとつはジャッキーがすぐ病気になったのだ。
重病ではなかったのだが献身的な看病が必要となりこ
れが私たちの距離をぐっと縮めた。

二つ目はロンドンのフラットの隣人がジャッキーが
危険な犬種であると管理会社に文句を言いに行ったことだ。
彼女はジャッキーを一瞬目撃して、危険な犬種と誤解したのだ。
見分けがつかないわけはない。彼は恐怖の対象にはなり得るはずはないのだ。
どちらかというと漫画的な様相をしている。
彼のキャラクターである頭でっかち。犬種特有の鼻口。毛がほとんどないピンク色の肌。
眉毛は永遠のしわとなって物事を深く憂慮している顔立ちに見せる。
彼の大きな唇は今まさに口紅をなめたかのような印象を与える。
晴れた日は彼の恒常的に立っている大きな耳から太陽の光が透けてみえる。
大きなアーモンドの眼はおそらく東洋の怪しい人物に見えるであろう。
結局隣人の苦情は結局杞憂に終わったのであった。

トレーニングが始まった。
トイレのしつけはすまされていたが、
階段にどう対処していいかわからないようであった。
小さいころに散歩にも連れていってもらえなかったのではないか。
6週間の集中コースで、座れ、伏せ、待てなどの命令に従うようになった。
今は毎朝ピーク・ディスクリクトをゆっくりしたペースで
長距離散歩するまでになってきた。
彼は羊に対してフレンドリーである。
驚くべきことではない。彼自身のみかけが羊のようだからだ。

しかし、この時点でも私はまだ彼の愛の対象にはなっていなかったのである。
彼の忠誠はまだコングにあった。コングとビスケットを両方だせば、彼はいつもコングを選んだ。
葉巻のように口から半分はみ出させながらグロテスクにくちゃくちゃかむ。
それがまたしばしば口から飛び出るので、カーペットの上を夢中で追いかける。

コングの次に優先順位が高いのは青く硬いボールである。
私が投げるとダービーシャーの庭を一日中かけまわっている。
ボールを追うことに夢中になって自分の生命や肋骨に何の注意も払わない。
壁によじのぼり、階段から転げ落ち、りんごの木を揺らし、
バラの茂みにはいったきり、ボールを加えて持ってかえるか、
命令に反応してしか出てこない。
彼の毛皮の白いユニフォームがどろんこになるのはおかまいなしだ。
悪くはない。雨の日にでかけるのを嫌がり、
大きな音がすると不安そうに神経質そうにのぞきこむ犬にしては。

ジャッキーはバスターと全く違う。そしてそれは私たち両方にとっていいことなのだ。
私はバスターを愛した。彼は世界で一番手のかかる犬だと主張申し立てたからだ。
ジャッキーへの愛は育くまなければならない。

別の犬を飼うのはもしかして間違いではないかと危惧し、
しかし少なくともジャッキーには家がみつかったので、
彼はラッキーだったとすることにしようと自分に言い聞かせていた。

しかし今はジャッキーがきてくれてラッキーなのは私のほうなのだ。


Mail On Line 06Apr2010

写真も転載 

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口紅をなめたかのようなジャッキー


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