傷つくのは日本の国際的イメージだけである

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12月1日に日本の調査捕鯨船が出発したというニュースを読み上げた
アナウンサーは、Shame on Japan (恥を知れ、日本)と一言。

ロンドンの日本大使館の前には恒常的に和歌山のイルカ漁と捕鯨漁に対して
デモが行われています。12月18日は大々的なデモンストレーションが行われる予定で、
日本人は危険なので近づかないように注意を受けています。

イギリスだけでなく世界各国からの多大なる反発と反感を物ともせず、
これだけ日本のイメージを傷つけてまで
鯨を殺しに行く「もっと良いこと」は何なのでしょうね。

イギリス在住のエッセイストくろだいぬひこ氏の記事を全文ご紹介します。

オランダ・ハーグのICJ(国際司法裁判所)で日本が南極海で行なっている調査捕鯨に対し
「国際条約違反」の判決が下されたのは昨年一月だった。
これを受けてIWC(国際捕鯨委員会)は調査捕鯨の評価や手続きの厳格化を決めた。
その狙いは日本に調査捕鯨の再開を先延ばしさせることだった。

ところが日本の水産庁は先月「南極海における調査捕鯨を再開する」と発表した。
そして今月一日には早くも勇新丸など三隻から成る船団が下関を出港した。
ICJの判決に配慮して捕鯨の規模は縮小する方針だが、反捕鯨国は納得せず、
オーストラリアとニュージーランドは日本を非難する声明を発表した。

水産庁はなぜ外国の反対を押し切ってまで調査捕鯨を再開するのだろうか。
日本にとって捕鯨はそれほど重要な産業ではない。
日本人一人当たりの鯨肉の平均消費量は年間わずか四十グラム程度である。
三十年ほど前までは日本水産、大洋漁業(現在のマルハニチロ)、極洋などの
大手水産会社が南極海に船団を送り、競ってクジラを捕獲していたが、
今はそういう時代ではない。

調査捕鯨を担っているのは日本鯨類研究所という財団法人である。
ただし、実際に捕鯨を行なうのは同所の委託を受けた共同船舶という会社だ。
共同船舶には二〇〇六年まで大手水産会社が出資していたが、
現在は日本鯨類研究所はじめ水産庁の関連企業のみが株主になっている。
民間の水産各社は「将来解禁されたとしても捕鯨事業は行なわない」と明言している。
つまり満たすべき需要も守るべき業界もないのに
水産庁は世界に向かって「日本の捕鯨を認めよ」と叫んでいるのだ。これは異常である。

日本が調査捕鯨を行ない、捕獲した鯨を国内で販売することで、
「日本人は今でも日常的に鯨肉を食べている」という誤解が世界に広まった。
欧米の新聞は日本の捕鯨船に銛を打ち込まれ、
血を流して苦しんでいる鯨の写真を何度も掲載した。
最近では攻撃的な環境保護団体、シー・シェパードが日本の捕鯨を妨害して話題になり、
「残酷な日本人」というイメージを拡散させている。
こうしたことがどれほど日本の評判を傷つけて来たか
水産庁の役人たちは知っているのだろうか。

そもそも英仏の法律家を含む強力弁護団で臨み、
必ず勝てると思われたICJの裁判で負けたのは
日本が普段から国際的な広報に力を入れていなかったからである。
そうした弱点を放置したまま、南極海で調査捕鯨を再開して何の利益があるのだろう。

「捕鯨は日本の伝統であり、鯨肉を食べることは日本の食文化だ」と言う人がいる。
しかし、それは昔ながらの沿岸捕鯨についてのみいえることだ。
日本が南極海で大規模な捕鯨を行なうようになったのは一九三〇年代で、
歴史的に見ればつい最近である。
日本から遠く離れた海域での捕鯨を「日本の伝統的漁業」と言っても説得力はない。
確かに日本の沿岸では太古の昔から捕鯨が行なわれて来た。
その漁法は今も北海道、宮城、千葉、和歌山などに残されているが、
そうした地場の捕鯨と遠洋で行なう大規模な商業捕鯨は区別して考えなければならない。 

IWCは捕鯨とは無縁のアフリカの国々まで巻き込み、
捕鯨支持国と非支持国に分かれていがみ合って来たが、
過去に一度だけ折り合えるチャンスがあった。
それは一九九七年の総会でアイルランドが独自の妥協案を提出した時だ。
簡単にいうとその内容は、(一)各国に沿岸での捕鯨を認める
(二)公海での商業捕鯨は恒久的に禁止する
(三)日本は調査捕鯨を段階的に停止する―というものだった。
各国はこの案を評価したが、従来からの立場に固執して妥結には至らなかった。
最近になって「あの時、互いに譲歩して妥結しておけばよかった」
という声が聞かれるが、後の祭りである。

日本に関していえば妥協しないのは前述したように、
満たすべき需要も守るべき業界も実は存在しないからである。
だから交渉が前に進まなくても一向にかまわないのだ。
この世知辛い時代にずいぶんノンキな話である。

日本の調査捕鯨再開を知ったシー・シェパードは
「待ってました」とばかりにこれを妨害する構えを見せている。

もう一度いうが、そうしたトラブルで傷つくのは日本の国際的イメージである。
もうこのあたりで日本は捕鯨に対する考え方を根本的に改めるべきである。
遠洋捕鯨をやめ、地場の沿岸捕鯨だけを守る方針に転換しても世論は反対しないだろう。
それによる日本のイメージの改善は大きな国益となるはずである。 



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ノーマンテイラー邦子

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ロンドン在住/通訳・翻訳業
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