大の男が号泣するとき

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「インカのご飯ボウルはまだキッチンにあります。
彼女が長い距離を歩かなくてすむよう家のあちこちに置いていたベッドも」

とベン・フォーグル氏。

「インカ自身はもういないけれど」
 
愛犬のラブラドールを失くしたサンデー・テレグラフのコラムニストは、
ボウルとベッドを片付けるのに時間を要した喪失感を寄稿した。

「ボウルやベッドは純粋で忠実だった、
そして本当に幸福を運んでくれた黒い犬を
思い出させるものなのです」と彼は言う。

「もう二度と立ち直ることはできないと思っていました。
世界にはもっとひどいことがたくさんあるのは知っています。
愚かだ思いますが、自分の正直な気持ちです。」

彼の記事にはたくさんの人が共鳴し、500通以上の手紙がきた。

「多くの人が記事を読んだよと声をかけてくれました。
ロンドンの屈強なタクシー・ドライバーが
目に涙をためて自分の犬の話をするんです。
私たちは本当に動物の好きな国民だと実感しましたね」

人間と動物の絆、そしてペットが死んだときの人間の嘆き。
人ではなく、動物になぜそこまで心を打たれるのだろうか。

2年前愛犬グレイハウンドを失くしたドーンは
スコットランドでペット葬儀屋を営んでいる。

「大きな筋肉隆々の男性が亡くなったペットを連れてやってきました。
刺青をしている手はシャベルのようです。
紅茶をすすめて霊安室でペットとふたりきりにしました。

一時間たっても彼は霊安室から出てきません。
ノックして入るとあの大男が子猫の前で
肩を震わせて号泣しているではありませんか。
私を見ると彼は言いました。
「ドーン、皆は私がグラスゴーで一番の強い男だと思っているよ」

1987年1月テレビ番組ブルー・ピーターの司会者、
恐れる物などこの世になさそうなジョン・ノークスは
視聴者に彼のボーダー・コリーが死んだことを知らせようとして、
こらえきれず、涙をのみこもうと嗚咽をしてしまった。
あの瞬間は久しくみんなの記憶に残っている。

2004年10月、イギリスの新聞記事に1300字の追悼記事が載せられた。
当時イギリスでもっとも有名なカメラマンやモデル、歌手などが出席し、
マドンナやグレースジョーンズが葬列の歌を歌った、
喪主はカミラ夫人から毎年クリスマスカードをうけとるほどの有名人、
アイルランドの帽子デザイナーフィリップ・トレーシー。
死んだのは彼の愛犬、ジャックラッセル・テリアのミスター・ピッグである。

「地震で被害にあっている人もいるというのに不謹慎かもしれないが、
ミスターピッグは私の友人であり。犬ではない。彼の死は本当に辛かった。
私のすべてだった。子供のようだった。
昼も夜も12年間、いつも私の傍らにいた。
どこのだれがそんなことをしてくれるかね」

競争の激しい政治の世界に身をおいたロイ・ハタスリー卿も2009年、
レスキュー犬バスターを失くしたときに同じような感情に包まれた。

「バスターの死は人生で最も痛みを感じたできごとだった。母の死よりも辛かった。
バスターと私は一心同体だったからね。私は母と一緒に暮らしていなかった。
私は母に毎朝朝食をださなかった。朝と夜一緒に散歩も行かなかった。
母は私の寝室においてあるバスケットの中では寝なかった」

「物理的には人間の生活は犬の生活より上にすべきだという
正常神経は持ち合わせていたが、愛情には物理的な限界などない」

獣医師、ブルース・フォーグル、冒頭のベン・フォーグルの父である。

「息子の犬、インカにキッチンで安楽死させたのは私です。ほんの数秒のことでした。
息が重くなり軽くなりそして止まった。私は居間へ行き、娘の肩にもたれて号泣しました」

42年の経験をもつ獣医は続ける。

「犬は完璧な無垢な心を持つ。自分の感情を隠さない。決して嘘はつかない。
だから我々の悲しみはコントロールできない激しいものになります。
親を亡くしたときより悲しいと思っていても罪の意識を感じることはありません」

深い悲しみを味わったにもかかわらず、たいていの飼い主は新しいペットを飼う。

バスターを失くし、今はジェイクの飼い主であるハタスリー卿は語る。

「だんだんわかってきたのだが、
犬を飼わないということはバスターが私にくれたものを否定することになる。
バスターを裏切らぬよう、私は犬の特質、犬らしさに触れ、犬と一緒に暮らすこと、
犬を所有することの極上の楽しみを続けていかなければならない」

The telegraph

 




 
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プロフィール

ノーマンテイラー邦子

Author:ノーマンテイラー邦子
ロンドン在住/通訳・翻訳業
保護猫延べ6匹、保護犬一匹、庭にキツネ3匹ほど
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