ケーキを、ビスケットを、トーストを、ポリッジをやればよかった

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Liverpool Street Station
 
私のダーリン、ピックルへ

まずは告白である。実を言うと、お前を殺すように計ったのは私だ。
獣医とナースと共謀して、準備は周到にやった。
お前は気付かなかったろう。知る由もなかったはずだ。
これもそれもお前の命を速やかに終わらせるためであった。

その時が来たとき、耐え難い、実に耐えがたい恐怖と痛みと悲しみで
私の胸は張り裂けそうだった。
お前のキッチンに座り(ここはいつもお前のキッチンだ)お前の寝息を聞きながら、
亡骸をどうするかなどという項目に、私が決定したことを記入していく。

一通り書き終えて、お前のベッドへ行き、
何か月も何年も毎晩やっているように、愛していると言って抱きしめた。

私がお前を殺したことはお前には秘密にしようと決意していた。
お前の呼吸が止まり、痙攣を起こし、
私の腕の中で悲しみの重さと同じようにお前の頭が重くなるときまで。
お前がもう何も聞こえなくなった時、私は皮膚が溶けるまで、悲鳴を上げて泣いた。

ああ、全然素敵じゃないね、ピックル。これで私の告白は終わりだ。

さて、まだお前に言いたいことがある。はっきり言うけど、賛辞じゃない。
自分でもわかってたと思うけど、お前の悪さは筋金いりだった。
仔犬の時はCDをかたっぱしからくちゃくちゃ噛んで、
電気のコードも電話線もっ靴も全部噛み砕いた。
うんちを身体になすりつけ、道路のおしっこをなめる。
ベッドのボードもなくなった。
子供の口からアイスクリームを盗んだし、テーブルの上を闊歩しながら
プディングやケーキを嬉しそうにかっこんでいた事もある。
私の所有物はほぼ壊滅されたと言ってもよい。
呼んでも来ない、後もついてこない。
チーズやチキンのかけらをもっているときだけ、命令に従う。
しかも私のベッドにうんちもしてくれた。そりゃ私のベッドは乾いてるし、
うんちを隠すのはちょうどいいかもしれないけど。

ついでだからもっと言わせてもらえば

私は怒ってる。お前は嘘つきだ。
仕事で数週間家を留守にし、友人のスカーレットに預けたとき、
すべて大丈夫だと私に思わせたじゃないか。
「しばらくお別れだね。いい子にしてるんだよ」と背中を向けたとき、
お前の身体の中はもうガンがひろがっていたのに。
スカーレットが送ってくれたお前の写真を見ると、今ならわかる。
目の輝きが薄れ、筋肉が落ちている。カシミヤのような毛の下は細くなっている。
いまだに悔しくてたまらない。自分を呪ってしまう。
11年半見守っていた心配性な私がなぜ見逃したか。

お前を迎えに行く電車に乗ったとき、スカーレットがしこりのことを教えてくれた。
忘れられない劇的な瞬間はいつも何気ない日常の中で起こるものだ。
しこりは突然お前の首のリンパを巻き込んでレモンのサイズになった。
コーンウォールに戻り、しばらくは何もなかったような日々を過ごした。
ディズニー・ピンクのような茜空を一緒に見て、思う存分馴染みの道を歩いた。

けれどお前の体は嘘をつけなくなってきた。
呼吸も苦しそうになり、吠え声もかすれてきた。
家を荒らす事もなくなった。
何より、お前が言うことをきくようになったというのがおかしい。
お前は絶対そんな犬じゃなかった。ゆっくり食べるなんて冗談だろう。

それでも私は否定していた。お前を救えると、二人で勝てると心から信じていた。

「ガンがクモの巣のようにひろがっていて、
お気の毒だが、これ以上何もできることはない」
と獣医に宣告されても、私はその足ですぐ、ヘルス・フード・ショップに行き、
大量のカプセルや錠剤を抱えて戻った。
身体に良いと聞いたターメリックのパウダーやオメガ3なども買い込んだが、
馬鹿だ。思い返せば、本当に私は馬鹿だ。

ケーキを、ビスケットを、トーストを、ポリッジをやればよかった。

私を攻撃しようとするやつがいたらお前は空中に飛び上って怒ってくれた。
私に子供ができないとわかったとき、お前の首をハンカチがわりに使わせてくれた。
心理学者は私たちはどうしようもない共同依存症と診断するだろうけど。
お前は人生のエンジンであり、日々のメトロノームだった。

私が何をしても許してくれた寛容と忍耐。
辛いとき、苦しいとき、困難なとき、いつもそばにいてくれた。
私の人生の選択はけっこうまずいことが多かったが、
いつも私が正しいと信じ、愛してくれた小さいピックル。

お前が死んだ日の朝、一時間ほど散歩する時間が持てたことに感謝している。
太陽の光を背に浴びながら、お前は世界のことなぞ何も気にかけずに歩いていた。

2002年8月20日に生まれ、
2014年1月14日に次の行く先へ行ってしまったピックル・パーキンズへ。

お前の名前を呼び、餌を与え、抱きしめ、笑い、そしてお前は全く知らなかっただろうが、
お前の生涯のうんちをすべてゴミ袋に始末したスー・パーキンズより


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メイヒュー・アニマルホームのフェイスブックより





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プロフィール

ノーマンテイラー邦子

Author:ノーマンテイラー邦子
ロンドン在住/通訳・翻訳業
保護猫延べ6匹、保護犬一匹、庭にキツネ3匹ほど
ホームページはただいまサーバーの不具合で閉鎖中
少々お待ちください。
contact: alicetigger24★hotmail.com

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