恋に落ちたチャールズ・ディケンズ

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バタシー・ホーム ― 恋に落ちた伝説の文豪

今年はチャールズ・ディケンズの生誕200周年である。
イギリス人に最も愛されているこの国民作家にバタシー・ホームより感謝の意を捧げたい。
彼のおかげで新たな道を歩み始めることができたのである。

1860年、ロンドンのホロウェイ地域で犬の保護活動は始まったものの、
飢えてさまよう犬たちをサポートしてくれる人はほとんどいなかった。
生き抜くためにはホームの存在をみんなに知ってもらう必要があったのだが、
望みはほとんどなかった。
ディケンズ自身は犬愛好家で、オリバー・ツイストにでてくるブルセイユ、
あるいはデビッドコッパフィールドのジップなどを含む、多くの犬を飼っていた。

1862年8月、ディケンズは有名な雑誌に「二つのドッグショー」という記事を載せるのである。
イズリントンの華やかな血統書つきの犬のショーとホロウェイにある
小さいレスキューセンターとの比較である。
ディケンズは当時のロンドンでは珍しいレスキュー・センターの様子や
スタッフなどに非常に興味を示した。
誰もそんなことをする人はいないのに、何故犬の幸福に心を砕いているのかと。
彼は書いた。

「イズリントンの華麗なドッグショーからさほど離れていない場所に、
全く違った種類のドッグショーの存在がある。
そのふたつのショーは誰も想像がつかない対極である。
二番目のドッグショーは町をうろついていた迷い犬、野良犬、食べ物をあさり、
戸口で寒さのあまり眠れず丸まっている犬たちである」

ディケンズが訪ねたときはホームはまだできてから18ヶ月しかたっていなかったが、
すでに1000匹ほどの犬で一杯になっていた。
虐待を受けた犬たちを描写するその筆に
ディケンズの動物に対する愛とホームに対する尊敬が現れていた。

「この犬たちは読者が非常に精通している典型的な野良犬である。
ペンダントのように耳がたれさがり、重い足取りで、奴隷のような微笑みをたたえ、
人間の顔色をうかがう。ふんふん鼻音を立て、あちこち走りまわり、
放棄され、欲しがられもしないし、臆病で嘆願する。
通りでまとわりつく哀れな犬を家の前でぴしゃりとドアを閉める。
その悲しいまなざしを思い出して夜眠れない。
この哀れで不幸な動物を助けようとしているのがこのホロウェイの保護施設なのである」

ディケンズはまた、犬がホームに届けられ、スタッフに受け入れらる様子を詳しく描写し、
特に犬が番号札を与えられるところが大好きだったようである。
またいろいろな医療手当てをすることにも感心していた。
ディケンズはバタシー・ドッグス・ホームに恋をしたのである。

記事はホームの運命を変えた。

ディケンズはホロウェイの小屋で行われている活動に、
人々の目を向け、賛同させたのである。
おかげで、ホームはサイズも大きくなり、人々の支持を受け、
1871年現在のバタシーに移ることになった。
ホームの歴史の新しいページの始まりである。

しかしいくらディケンズのサポートのおかげであったとしても、151年たった今、
このように今日の動物レスキューの世界的なシンボルであり、
理想的なモデルとされるバタシー・ドッグス・アンド・キャッツホームになるとは誰が想像したであろう。

最初にオープンしたときは、犬の世話係はジェイムス・パヴィット一人であった。
2010年には317人のスタッフと約550人のボランティアがバタシーの何百匹の動物の世話をしている。
一軒の家から始まったホームは、今は3センターを有し、敷地のトータルは100,000平方メートルと広がった。
17294_Dickens.jpg
バタシー・ホームHPより
Battersea Home


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ディケンズにそういう業績があったとは知りませんでした。
すてきな話のご紹介ありがとうございます。
英文科だったので、何冊か読みましたが、ディケンズは苦手でした。
だから新たな目を開けれた思いです。

Re: タイトルなし

mi-goroさん、
私もディケンズはいつも途中でほおり投げておりました。
オリバー・ツイストのミュージカルは大好きなのですが。。
でもそんなすごい人が応援してくれたとはとてもラッキーでした。
日本も著名人が応援してくれるといいなあと思っています。

有名な言語学者のNoam Chomskyは、何か成し遂げて名を知られないことには、何を言っても聞く耳を持ってもらえない、と考え、言語学で一旗あげたわけで、本命は社会問題だったそうです。
やっぱり頭のいい人の考えることは違うなあ、って思いました。
動物の好きなセレブリティーなんて沢山いそうなものですが。
やはり世間に物申すという事は、日本人苦手なんでしょうかね。

Re: タイトルなし

FSYAMさん

まったく仰るとおりです。
影響力のある人、発言力のある人に勇気をもってぜひ物申してほしいです。
それでこそセレブになった意味があるのです。

まず最初にセレブには毛皮を着ないでほしいです。
何を考えているのでしょうね。何も考えていないのです。
プロフィール

ノーマンテイラー邦子

Author:ノーマンテイラー邦子
ロンドン在住/通訳・翻訳業
保護猫延べ6匹、保護犬一匹、庭にキツネ3匹ほど
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