たった一人で冬を待つ

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ロンドンにお住まいのAさんから松村なおとさんの近況を見つけましたと
ご親切にメールをいただきました。
多くの方が松村さんのことを心配してくださいましたので、
もしまだご存知なければと思い、Aさんに教えていただいたワシントンタイムズ抜粋し、
アップさせていただきす。Aさん、ありがとうございました。

たったひとりで冬を待つ

チェルノブイリ原発事故以来最悪とされる福島県原発事故。
その立ち入り禁止区域の中にたった一人で住むとされる松村なおと氏が
ワシントンタイムズ紙のインタビューで近況を伝えた。

冷たい風が吹きすさぶ中、タバコに火をつける。
「これをやめたら、病気になってしまうんでね」

松村なおと氏、52歳。一日一箱を吸うという。
家から8マイルの距離にあった原発3基から放出された放射能の量は広島と長崎の168倍とされ、
1986年に起こったウクライナ地方チェルノブイリの原発事故以来最悪のものとされている。

電気もなく、発電機の金も持たずに生活している松村氏は、
隣人から譲り受けた石炭でこの寒い冬をまかなえるかどうかわからないと言う。
すぐ零下になる東北地方の冬である。

彼が世話をする何百もの動物。
牛400頭、豚60匹、鶏30羽、10匹の犬、100匹以上の猫たち、そして一匹のダチョウ。
この動物たちはもう来年の春を見ないかもしれない。

「この動物たちを助けることができるのは人間だけです」

「餌の貯蔵は12月末で尽きてしまいます。餌だけでなく、冬を越す小屋も作らなきゃいけない。
私はひとりで全部やっているんだ。政府がやるべきことを、私だけがやっている」

家系をさかのぼると武士に行きつくという松村氏はスパルタ教育を実践する父に育てられた。
一生懸命働き、自分の足で立てと。ずっと農業に従事している。10年前に離婚して以来一人である。
21歳と23歳の子供たちは埼玉に住む。

原発事故後、子供たちは父を呼んだが、
「心配するな。この原発事故でみんな死んでもわしは死なん。ここからは出ない」と拒んだ。
彼は自分を砂漠の中の一匹狼になぞらえる。
そして原発は生きているものを、今もそして未来も食べつくす目に見えない敵だとみなす。

日没後、あたりは真っ暗になる。遠くまで闇である。人間の気配すらない。
テレビもインターネットも携帯も何も持っていない。
石炭の火で暖ををとり、7時には布団にくるまる。
自分の身体の中で何か起こっているかもしれないという悪夢にうなされながら。

夜明けとともに起き、缶詰を食べ、、原野を20分ほど犬と散歩する。
日のあるうちに墓を清掃し、動物たちの世話をする。
牛や豚は3月に飼い主たちがいなくなってからは柵囲されていない。

松村氏は原発を所有する東京電力を責める。彼の100歳になるおばを殺されてしまったからだ。
富岡から会津若松の病院を何度もたらいまわしにされ、疲れ果てて死んでしまった。

「多くの人が叔母のような亡くなり方をした。東京電力のせいだ。ひどい会社だ。
政府より権力を持っているんだ。電力供給を管理しているからな。しかもマスコミにも影響力がある」

11月のある日曜日、救急車が彼の家の前に到着した。
「家ん中に入ってきたのでびっくりしたよ。誰が寄こしたのかわからない。
身体を見たけど、特に悪いところはなかったようだ。俺は退屈もしてなければ鬱にもなっていやしない。
一人に慣れっこだしね。医者が俺のことを放射能のチャンピオンだといったよ」

彼は動物と原発のことを話す時、一番情熱的になる。

「エネルギーを悪い形で使うのを世界中でやめるべきだ。人間がつくりあげたものはいつか必ず壊れる」

彼は続ける。

「富岡も他の立ち入り禁止地域と同じように大掛かりな手立てをとらなければ消えていくだろう。
年寄りだけが村に戻りたいと言っている。若い人はもう戻らない。20年以内には年寄りはみんな死んでいく。
生命のサークルを受け継ぐ若い世代はいなくなり、ついに誰もいなくなる」

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THE WASHINGTON TIMES

松村さんの関連記事は前にもアップしています。併せてご覧ください。
置き去りにされた一人と一匹

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プロフィール

ノーマンテイラー邦子

Author:ノーマンテイラー邦子
ロンドン在住/通訳・翻訳業
保護猫延べ6匹、保護犬一匹、庭にキツネ3匹ほど
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私に何の関係があるというのだ

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