記憶の鍵を開ける救助された動物たち

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36人のお年よリが住む西ロンドンのエルギン・クロースのラウンジ。
スタンとオリーというテレビ俳優の名前がつけられた2匹の子猫が
お年よりたちの膝から膝へと飛び回っている。

「みんなが知っているテレビ俳優の名前をつけたのは
お年寄りたちが思い出してくれるかもしれないと思ったからです」
メイヒューのコーディネーター、アニー・ウォーカーは語る。

動物レスキューと福祉教育のパイオニアであるメイヒュー・アニマルホームは
コミュニティ・センターやケア・ホームなどお寄りのいるセンターを訪問するセラポー
(セラピーを犬猫の手をもじったもの)を60人以上のボランティアの協力で運営している。

彼らは国で初めてのアニマル・セラピー団体ではない。
1983年に動物を医療現場に活かす全国チャリティ・ペットが設立され、
スコットランドでは認知症患者を介助するように訓練された犬が働き始めている。
メイヒューのセラポーが他の団体と違うところははまず、捨てられた動物たちを救い、
今度は人を助けるために動物たちを送り込むのである。

「居住者の生活を豊かにするためです」とメイヒューのサラ・ディキンソン。
片方の目でスタンとオリーを追いかけ、
猫を見にきた9人の女性の居住者たちにも注意を払いながら語る。

「私たちが訪問するほとんどの方は認知症やアルツハイマーを患っています。
そういう方たちは大変孤独になりがちです。
エルギン・クロースのように広くて、プライバシーもあり、
明るく楽しいところでさえも鬱になりやすいのです。

しかし今この部屋がどれだけ生き生きとしているかお分かりになるでしょう。
皆さん、動物がやってくるのをとても楽しみにしてくれています。
患者さんはただ自分の部屋に座っていたり、
テレビの回りに集まってみているだけではないのです。
何か一緒に関わりたいと思っているのです。
動物がくると皆と会話が始まります。そしてその後も話題はつきず、
面会にきた家族にまでも楽しそうに話すのですよ」

動物は友情だけでなく、閉じ込められた記憶の鍵も開けてくれる。

「以前フェレッを連れて行ったときは男性が沢山見に来ました。
その中の一人が若いときにウサギを捕まえるときに
フェレットを使ったんだと嬉しそうに話してくれました」

テレビラウンジの近くに座っていたマギー・デイビス(82歳)は
もがく子猫を抱きかかえようとしていた。
彼女は6人の子供、26人の孫、12んのひ孫がいると私に3回教えてくれる。

ご主人と息子さんとお母さんの死のことを語るマギーに、
「この動物たちは家に生命を吹き込みますよね」と言うと
「そうよ」と顔を輝かせた。「動物じゃないのよ、この子たちは。子供なのよ」

最初に犬をレスキューし、次はホームの住人たちの記憶をレスキューするチャリティ団体の話である


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The photographer Olivia Hemingway,

by CRAIG MCLEAN
independent UK



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デアドリの瞳が語ること

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Deirdre’s story

ロンドンの通りで苦しんでいたデアドリが
メイヒュー・ホームに到着したのは4月の終わりでした。
13歳くらいと推定され、すぐ医療措置がとられましたが、
マイクロチップも首輪もない年老いた雌犬は
誰からも面倒を見てもらっていないのは明らかでした。

栄養失調で、衰弱のあまり背中も足も力がはいらず、
立つことさえも嫌がるのです。
精神的にも混乱をきたし、鎮痛薬も、美味しいエサも、暖かいベッドも、
優しく撫でる手も、デアドリを立ち上がらせることはできませんでした。

デアドリの身体をチェックし、検査をし、
この子にセカンド・チャンスを与えることができるかどうか査定しましたが、
残念なことに、体の衰弱に加えて、デアドリはガンにかかっているようでした。
どんどん気力をなくし、
何よりも彼女がもう生きていたいという希望をもっていないので、
これ以上治療を続けていくのは残酷だと判断しました。
精神的なダメージとこれからの肉体的な症状増悪を考えた場合、
彼女のみじめで苦しみばかりであっただろう人生を包み込む
静かで尊厳のある終焉の方法を与えることにしました。

非常に耐え難いケースでした。
メイヒュー・ホームのサポーターたちに告げることはもっと辛いことです。
しかしこれは現実であり、日々増加のみちを辿っています。

しかし自分では苦しみをどうしようもできない動物たちのために、
せめて最後の瞬間、そばに寄り添い、痛みを解放し
安らかに生を終えるよう手助けをし続けていかなければならないと思っています。

Mayhew Animal Home Facebook より


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この写真を見たときに、デアドリとしっかり目が合ってしまいました。話しかけてきます。
私はあきらめることなく、停滞することなく、がんばるよと言いました。




政府の支援なくしては

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At Royal Albert Hall

メイヒュー・アニマル・ホームからのニュース・レター
タイトルは Canine Crisis

動物好きが旅行に行くと、
世界中のあちこちで野良犬や野良猫がうろうろしているのを見てショックを受ける。
しかし、それはわが国でも同様である。
捨てられた犬や猫でチャリティ団体がパンクしそうになっているのである。

ブレント地区にあるメイヒュー・ホームは年間約150匹の犬を保護し、
そのうち飼い主に返せるのはわずか3分の一以下だ。
保護犬の中でマイクロチップをしている犬はほとんどいない。あっても古いものである。
これでは飼い主を見つけるのは至難の業だ。

7日たっても飼い主があらわれない犬たちは法律上メイヒュー・ホームに属することになる。
そこで私たちは新たな飼い主を見つけるのに必死になるのだ。

受付は「犬がいらなくなった」あるいは「飼えなくなった」という
ひっきりなしの電話の応対で明け暮れる。
毎月150本の「犬がいらない」電話がかかってくる。
そのひとりひとりと問題の解決法を話し合わなければならない。
何故話し合うのか。単純な理由である。
私たちはいらないと言われた犬を全部ひきとれないからだ。

ホームのメンバーのリサは語る。
「犬が欲しくないというフォームを残していった人を時間をかけて説得します。
すべての犬を助けてあげられないのが本当に苦しい。
捨てられる犬の多さに比べてひきとってくれる家が間に合わないのです。
この国は簡単に犬を飼え、簡単に捨てることができる。悲しいことです。
犬を飼うという責任を軽く見ている人があまりにも多すぎます」

メイヒュー・ホームが一杯になったらどうなるか。

「もしいらないという理由が犬の行動問題であったら、適切なアドバイスをします。
あるいは他のシェルターの詳細を渡し、そちらに連絡してもらいます。
しかし状況はだんだん厳しくなってきているのです。
もしどこも収容することができなくなれば安楽死も考慮されなれければなりません。
なんと意味のない生命の無駄でしょう!」

保護団体は一つ一つの問題をに関わっていたら立ち行かないが、
ロンドンの捨て犬にドアを閉ざしたら,ますます問題が大きくなる。
無責任な飼い主はそこらへんに捨てて、犬は町にあふれかえるであろう。

解決は容易ではなく方法はひとつではない。マイクロチップの強制、非常に良い考えだ。
管理基準の制定もいくつかの問題を解決できるであろう。
しかしこれらは、問題が起こったときに対処できるためのものである。
最初からそういう問題を起こさせないための策として、
メイヒュー・ホームはもっと総合的なパッケージが必要であると考えている。

まず繁殖の規制を強化する。飼い主の登録システムを作る。料金を課す。
不妊手術を義務付け、動物が適正に取り扱われているか毎年のチェックを行う。

● シェルターから動物をひきとること
● 不妊手術を施すこと
● 飼い主としての責任を教育すること

この3つを政府の支援のもとに推進することが前進の一歩である。

動物福祉の問題は政府のサポートなしではやっていけない。
動物問題は社会全体の福祉と切り離すことができない。
つまり動物福祉に力をそそぐことは動物にも人間社会にも
恩恵をもたらすということを意味するものである。

Mayhew Animal Home

日本政府の器量が不安ですが、
私たちの側も政府にプレッシャーをかけることのできる国民性に代わっていくことが、
今後の課題だと思います。

メイヒュー・ホームは我家のすぐ近くですが、
動物をひきとっても返しに行く人も多いのでしょう、
もらいたいと思っても向こう側の敷居が結構高いのを感じます。
「庭のある人」とか「その犬種のことをよく知っている人」
「犬を飼った経験のある人」「一日中家にいる人」などなど。

「犬を飼ったことがなく、神経質な猫がいて、ほとんど家にいない、
散歩をめんどくさがる私」などは、門前払いでしょうから、何か作戦考えないとな。


相当な言われよう

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At Oxford

ロンドンのメイヒュー・アニマル・ホーム国際部門では、活動の一環として開発途上国
(日本も動物福祉の定義においては第三世界のカテゴリーにはいっているようです。)
の獣医の研修プログラムを行っています。

2010年このプログラムに参加した人が、私もお会いするチャンスに恵まれた
地方行政機関でご活躍なさっている獣医の美晴先生です。

以下メイヒュー・アニマルホーム HPより

日本のキャット・ネットワークのボランティアであり、
獣医として滋賀県動物保護管理センターに勤務する美晴さんは
小動物のための福祉シェルターがどのように機能しているか、
そして犬猫の不妊手術の最新の技術を学ぶべくメイヒューアニマルホームで研修を受けた。

「特に猫の最新の去勢不妊手術の迅速で効果的な最新技術を獲得できたのは嬉しかった」
と美晴のコメントである。

手術室にいないときは犬猫舎のスタッフと多くの時間を過ごし、
ストレスのたまった、行動が予測できない動物の扱いかたも学ぶことができた。
「ロンドンで使用されている方法が今まで経験した中でベストであり、
動物スタッフの知識と技術には非常に感動した」と語る。

動物福祉がほとんど存在していない、里親スキームのない、
経験をつんだ獣医の助けがない状態の日本からきた(←この言われよう:訳者)彼女にとって
私たちの作業は目を見開くような経験であったと思う。(←上から目線:訳者)
積極的に質問をし、すぐにいろいろ覚えてくれたポジティブな美晴と
一緒に働くことができてとても嬉しかった。
日本に戻ったら、ここで学んだ最新の技術で状況改善に努めてくれることを祈る。


イギリス人が日本の動物福祉状況をどう見ているか判明する言葉があちこちにちりばめられていますね。

同じページで日本の動物福祉を紹介しています。

日本の動物福祉

イギリスではペットを恒常的に店頭では販売しない。

日本では商店街のショー・ウインドーに並べて、消費者の目を引き、
ハンドバッグやアクセサリーのように家に連れかえるようにしむける。

このように犬猫を商品のように取り扱う販売業者の態度は
犬猫を捨てる人々の表面下の原因となっている。
ショー・ウインドウに飾られているキュートな子犬に
その場で恋におちて買っていく人が後をたたない。
特に東京のような大都会では孤独になりやすい。
仕事から家に戻ってきたときに迎えてくれる何かがほしいために犬を買う。

そういう人たちは犬が必要としていること、犬種の性格、散歩が必要なこと、
犬の食事のことなど、犬と一緒に暮らすことはどういうことなのか何も知らずに飼う。
その結果として多くの犬はしつけもされないまま大きくなり、言うことをきかない、吠える、
攻撃的になったりといろいろ問題が出てくる。

犬が手におえないと思うのは時である。興味を失い、捨てる。

この対極をいくのがあまりにも犬におぼれて、死なれるのがこわくなり、
病気になったら捨てることを選択する。

日本では捨てられた多くの犬は選択肢がない。行政機関によって殺戮される。
近年では改革に向けてキャンペーンの動きはあるが、
残念なことに状況を劇的に変えるまでにはいたっていない。

第二次大戦後、野犬の増加により、動物福祉は日本にとって問題となってきた。

日本動物虐待保護団体(JSPCA)が1948年に設立される。
1973年に動物保護管理法が施行され、
獣医や動物福祉団体からの強い要請で1999年に改正された。
動物福祉が国民の意識に上ったことにおいて非常に意義のあるものである。
日本の動物福祉法は人間と動物のよりよい関係を推進する必要性も含めている。
それは人々の行動も変えるコンセプトであるイギリスの動物福祉法の意図にも似ている。
動物の福祉と管理法は動物を保護するだけにとどまらず、
生命を尊ぶ、より精神的に豊かな社会を作ることをめざしている。


動物福祉なぞ存在していない、完全に発展途上国と、相当な言われようですが、
発展途上というのはこれから発展するという意味です。

美晴先生のお勤めになる滋賀県動物保護センターのホームページです↓

滋賀動物保護管理センター

行政機関なので、おおっぴらに寄付のお願いやボランティアのお願いができないとのこと。
動物のためにイギリスに勉強に送リ出してくれる保護センターです。
美春先生は朝晩びっしり研修を受け、休日はイギリスのあちこちのシェルターの見学に出かけていました。

しつこいようですが、「死のトラック」一台分の4500万に使われた税金と
この留学制度に使われる税金の価値はどうなのでしょう。



The Culture We Need To Break

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At Piccadilly Circus

Mayhew Animal Home and Human Education Centre

125年の歴史をもつ 動物レスキュー教育センターです。
我家は計7匹の猫をここから貰い受けました。(5匹はすでに天寿をまっとう)

このセンターがユニークなのは
教育機関と国際部門があることです。
日本の動物愛護センターからスタッフや獣医の方がよく研修に見えています。

地方行政機関の獣医さんと以前お話したことがあるのですが、

「どうして日本もイギリスのように殺戮処分の数を減らせないのでしょうか。」
「日本も以前よりずっとよくなっているのですよ。
ただ動物に対しての文化が違うのは否めませんね。」
と身も蓋もなくなってしまったのですが、
変えていかなければならない文化もあるのです。

Mayhew Animal Home の ホームページより
私たちがやっていること

●ホームを運営するのに一日3,400ポンドかかります
●寄付によってのみ運営されています
●犬40頭、猫150頭、げっ歯類10匹まで収容可能
●動物福祉教育やアドイバスを提供し地域コミュニティと共同活動するオフィサーが4人います
●セラピーのため老人病院や小児病院を訪問します
●すべての犬猫に対して低価格の不妊手術、マイクロチップ、予防注射を提供しています。
●ブルテリアなどの闘犬に関してはホームの負担でホーム内で不妊手術を行います。
( これは現在イギリスにこの種があふれていて道義的に私たちがやらねばならない使命だと
 信じているからです)
●野良猫がこれ以上増えないために捕獲して不妊手術を施し、また放す いわゆる
  Trap, Neuter and Return (TNR)プログラムを遂行しています
●犬猫の里親を見つけます。
●飼い主のほうが人生の危機に陥った場合、
●ホームで短期間預かるペット難民プログラムというシステムを設けています
●ホームはファンド・レイジングのために地域的あるいは全国的に年間50以上のイベントを行っています。
●犬への虐待を迅速に見つけるために地方自治体、住宅供給団体そして警察と緊密に連結しています。
● 「動物が苦しむ前に見つける」を信条としています。
●Mayhew Internationalはアフガニスタン、インド、ルーマニア、ペルー、ロシアなどの国々で活動し、
● 国際獣医トレーニング・プログラムをイギリスで行っています。

以上概要

MAYHEW ANIMAL HOME
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プロフィール

ノーマンテイラー邦子

Author:ノーマンテイラー邦子
ロンドン在住/通訳・翻訳業
保護猫延べ6匹、保護犬一匹、庭にキツネ3匹ほど
ホームページはただいまサーバーの不具合で閉鎖中
少々お待ちください。
contact: alicetigger24★hotmail.com

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